俺様社長に甘く奪われました
散る桜、舞い降りたキス
翌日、出勤早々軽い調子で「昨日はすみませんでした。大丈夫でしたかぁ?」と聞いてきた松永に、莉々子は鋭く睨むことで答えた。
あの状態を大丈夫だと思うなら、松永は相当鈍い男だ。
「おいしいものをご馳走してくれるんですよね?」
「そんなわけがないでしょう? 大失敗だったんだから」
嘘が最初から見抜かれていたことを莉々子は黙っておくことにした。
「ところで里穂ちゃんの具合はどう?」
「熱があるので、今日は休ませました」
付き合い始めて早々に彼女のアパートで半同棲を始めた松永は、今朝もそこから出勤してきたそうだ。
とにかく今度なにか人手を必要とするときには、人選に気をつけよう。莉々子は密かな決意を胸に午前中の仕事を終え、お昼となった。
社員食堂のお決まりの席にはすでに真紀が陣取っていて、莉々子の姿を見つけるや「こっちこっち!」と手を振る。そして、向かいに座った彼女のランチトレーを見て「それ全部食べるつもり?」と目を見張った。
「うん、ちょっと食べて発散したいなと思って」