俺様社長に甘く奪われました
望月のおっかけから逃げるために一緒にラウンジを出て、部屋で飲み直すことになり、酔っ払ってそのまま朝を迎えたことをひと思いに小声で話すと、ふたりとも絶句して固まってしまった。その顔には、“もしかして社長と一線を越えたの?”という疑惑が満ちている。
「念のために言っておくけど、“そういうこと”にはなってないからね? 志乃さんも勘違いしないでください」
それぞれに念押しすると、からかうような目で「本当に?」と莉々子を見た真紀とは対照的に、志乃は複雑な表情を浮かべていた。
もしかしたら志乃には、莉々子のとった行動を女性として恥ずべきことだと思われてしまったのかもしれない。以前、恋愛の話になったときに、志乃には長年片想いしている相手がいると聞いたことを思い出した。これは想像にすぎないが、志乃は貞操観念がしっかりしていて、莉々子の行動が彼女の目には軽率に映ったのかもしれない。
「それじゃ、この前の忘れ物って、そのときのものだったの?」
志乃が小首を傾げる。
「……そうなんです」
さすがに中身がストッキングだったとは言えない。