俺様社長に甘く奪われました

「忘れ物ってなんの話?」


 真紀がテーブルに身を乗り出す。


「あ、それはね……大したものじゃないんだけど、ホテルの部屋に忘れ物をしちゃって、社長が総務部に届けてくれたの」
「へぇ、大したものじゃないのにわざわざ?」


 真紀がニヤニヤと笑い目を細める。どうやら彼女は、莉々子と望月の間に“なにか”があってほしいと期待しているようだ。


「それで、松永くんとのことがどう社長に繋がるの?」


 志乃は話の先を促した。


「あぁ、えっとですね、私がお金持ちのイケメンが苦手だと言ったことに社長が怒って、その考えを改めさせてやるとかで……」


 本当の理由がそこにないかもしれないということは、ふたりには言えない。莉々子は三年前の望月との関係まで白状はできなかった。


「改めさせるって、どうやって?」


 四つの瞳が向けられ、莉々子はなんとも居心地が悪い。

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