俺様社長に甘く奪われました
「なんにでも贅の限りをつくしているわけじゃない。金持ちとひとくくりにまとめられるのは心外だ」
「……すみませんでした」
ここはしおらしく謝るしかない。
元彼の仕打ちは大罪だ。おかげで莉々子の目には厄介なフィルターが装着されてしまったのだから。
「あの、ひとつ確認したいことがあるんですけど……」
望月の視線がゆっくりと莉々子へ向けられる。
「この前の夜、ラウンジで言ったことと、さっき桜の下で社長が言ったことは本気ですか?」
彼は思い返すようにいったん目線を外してから、再び莉々子を見た。
望月が放った『俺と恋をしないか』という言葉が、頭の中をリフレインして鼓動が速まる。
「本気だ」
望月がそう言った途端、莉々子の心臓がドクンと音を立てる。
恋はもう凝りたはずが、望月があまりにも真剣に言うものだから心にさざ波が立った。