俺様社長に甘く奪われました

 かといって、莉々子はすぐにイエスとうなずくこともできない。『最初からそれほど好きでもなかった』という元彼のセリフの勢力が、未だに巨大すぎるのだ。


「……少し考えさせてください」


 それでも譲歩したほうだと莉々子は思う。
 望月は「いい返事を待ってるぞ」と、意外にも待つことに応じた。そして、おもむろに立ち上がった彼が、持ち帰ったキャリーバッグからなにかを取り出して戻る。


「中国土産だ」


 彼が差し出したのは、望月の手のひらより少し大きなチューブ型の物体だった。


「ほら、手を出せ」


 言われて反射的に出した莉々子の手に彼がそれを乗せると、ずっしりとした重みを感じる。


「……これ、なんですか?」
「ハンドクリーム」
「はい?」


 意外なお土産に目を見開く。

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