ネコと教師
「ばか!くっつくなっての!」
思わず声のボリュームを一個上げて、白石の肩を両腕で押し返した。
おかげで職員室内の視線が余計にこちらに集まってしまう。
(し……心臓に悪すぎる……)
おれのたじろいでいるのがよほど面白かったのか、白石は腹を抱えて呑気にけたけたと笑った。
「せんせーシャイだ。シャイシャイボーイだ」
(なにがシャイシャイボウイか)
「あのな、おまえらは昼休みでも先生には仕事があるんだよ。そうやって人を小馬鹿にするだけなら、こんなとこに来るんじゃない。何度も言わせるな。職員室なんだぞ、ここは」
めげずになんとか持ち直し、ちょっと強めに言ってやる。
するとまた、白石はいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「そっかそっか。まわりにヒトがいると恥ずかしいんだ」
どこまでも自分を疑わない奴である。
なんでおれがおまえを好いている前提でものを話すのか。
その後、結局昼休みじゅう白石が居座ったおかげで私の予定は大いに狂い、この時間のあいだに終わらそうと思っていた仕事は、すべて放課後に回さざるをえなくなってしまったのだった。
部活動の顧問を受け持っていなかったのが唯一の救いだ。