ネコと教師

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、ようやく解放された私は、はあと大きく溜息をついた。

「大倉先生」

と、そのとき突然背後から声をかけられて、私は思わず飛び上がりそうになった。

「な、なんですか。杉田先生」

声の主は私の真後ろに机のある、杉田教諭であった。

彼はなんともいえない、しかめっ面で私を見ていらっしゃった。

「大変ですね。今度は先生があの問題児のお相手をまかされちゃいましたか」

てっきりなにかお叱りを受けるものと思った私は、そのことばに思わず、

「はい?」

と間抜けな声で返してしまった。

杉田先生は私の動揺など気に留めていない様子で、しかし少しためらいがちに言った。

「いえ、大倉先生はご存じでないと思われますが」

「はあ」

「白石さん、毎年ああなんですよ」

私は今年度からこの学校に赴任したばかりの新米だったので、杉田先生のことばの指すところがわからず、訊き返した。

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