ネコと教師
「毎年、とは?」
「あの白石淳子って子は、一年生の頃から、ああしていつも誰かしらの教師に絡んできていたんですよ。妙な噂を自分で流して担任に呼び出させたり、さっきのように不必要に接触を試みたり……。よくわからない子でしてね。それならたとえばその先生に憧れているとか、そういったことなのかなあと思えば、ふた月み月もすれば、今度はぱったりと、別の先生に同じようなことを始めるんです。はは。おかしいでしょう?私もありましたよ。去年の二学期の終わりだったな」
(なんだそりゃ)
「それもですね、相手は男も女もないんですよ」
と、ここで割って入ってきたのは、杉田先生とさっきなにやら、ぼそぼそ話していた青田教諭であった。
「普通そういうのって、異性の先生に憧れるものじゃありません?」
いきなり同い年の女性教諭にそう言われて、私は少し途惑った。
「いやあ、どうなんでしょう。わかりません。私にも子どもの頃、教師になろうと思うようになるきっかけをくれた、憧れた先生がいましたが、その方は男性でしたからね」
「そうですか?すみません。自分が男の先生にしか憧れたことがなかったものですから。でも、男の方はともかく、女の子の場合は大抵そういうものだと思うんです」
「はあ」
「でも、白石さんは違うんですよね。こう、なんていうか、サイコロを振って出た目を適当に憧れている……というのか。なつく先生が毎回全然違うタイプ……って言っちゃうと失礼かもしれませんけど。うーん。これじゃ憧れって言いませんかね。すみません。こういうの説明するの、へたくそで」
「や、わかります」