ネコと教師
「さっきっから、なんでついてくるんだ?おまえの家、全然逆方向じゃないか」
「ん?泊まるから」
「は?」
あまりに理解不能な言語であったため、凍り付いてしまう私の頭。
(ああ、えーと。ああっ。わかった。おじいちゃんの家とか、親戚の家とか、今日はそういうとこに泊まると、こいつは言ったのだな。それがたまたま、こっちの方角だと。そういうことか。あー。びっくりさせるなよ。心臓が止まるかと思ったぜ)
「や。今日、先生んとこ泊まるから」
後頭部に鈍痛。
やっぱりおかしい。
なに言ってんのこの子……。
いやいやいや!
あの先生方のありがたい言葉を思い出せ。
これは私を罠にかけるための餌だ。
こいつにとってこんなもん当たり前で、日常茶飯の釣りなのだ。
取り乱すな馬鹿たれ。
ウブでお盛んな高校生じゃあるまいし。
平常心平常心!