ネコと教師

白石の乗る自転車を走って追いかけて、結局たどり着いたのは、やはり私のアパートの、しかも私の部屋の前だった。

「おい!おまえ!な、なんで、おれの家を知っているんだ!」

「あれえ、覚えてない?来年、年賀状送るから、住所教えてって言ったの。それを頼りに突き止めました」

やけに季節はずれなことを訊くなあと思ってたら、いつのまにか住居特定されてました。

個人情報は大切にしましょう。

(つーか恐えーよ、こいつ)

「いい加減にしてくれ。早く帰らないと親が心配するんじゃないのか?」

「えーと、じつはあたしはみなしごで帰るところがないのです」

「嘘つけ。このあいだ三者面談したばかりだろうが。冗談は大概にしないと、さすがのおれだってなあ……」

「怒る?」

「……そうだ。怒るぞ!めちゃくちゃ怒る!」

「じゃあ、あたしも怒るぞ」

「な、なんでおまえが怒るんだよ」

「だって、……先生が泊めてくれないから」

……ああ、夢の教師生活よ、男の憧れよ、ロマンよ。ここに極まれり。

って、ばかやろう!

そんなうまいこといくか!

こんなうまい話があってたまるか!

だいたい私はそんな破廉恥な目的で教師という職に就いたわけじゃないんだぞ。

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