ネコと教師
「あのな、白石。おまえがここまで来てしまったことは、まあ許そう。だがな、担任の家に生徒をそうホイホイと泊められるわけがないだろう。猫の子かなにかじゃあるまいし」
「にゃーん」
「……なんだそれは」
「あたし、猫の鳴きまね、うまくない?」
「いまそんな話をしてるんじゃないだろ!まじめに聞け!」
「猫だと思えばいいじゃん」
「は?」
「だーからーっ!猫の子だったら、いいってんでしょ?」
……おお、夢の教師生活よ、おれの志したものよ、どこへ……。
くそう、なにやってんだおれは?
こんな子どもになめられておちょくられて、こんなんでいいのか。
こんなんで教師なんていえるのか?
「おまえは猫じゃない。そんなごまかしでなんとかなると思うなよ」
「ひどいな先生。捨て猫、見殺すんだ。あたし、行くとこないのに」
「……ああ、そうか!行くとこないか。そうかそうか」
私は自分の部屋の鍵を開け中に入り、玄関に置かれた電話と、その隣に置かれたあるものを手にした。