ネコと教師

「ちょ、ちょっと待ってください。お宅のお嬢さんが、無断で担任の家に外泊しようとしてるんですよ?放ったらかしでいいんですか?」

「先生がご連絡くださったのですもの。無断外泊じゃございませんわ」

「はあそれは。いやしかし、無断でないとは言っても、外泊相手は私、担任の教師ですよ?」

「それがなにか?」

それがなにかって……。

ニュースとか見てないのかあんたは。

問題はあるだろう、いくらだって。

まず私と白石は一応に男と女だ。

なにか起こそうなんざ思っちゃいないし、起こすわけもないが、それでも親なら一番にそれを気にするはずだろう。

それに、体裁だってある。

こんなふうに教師の家に女生徒が泊まり朝帰り、なんて、世間的に許されるものではないはずだ。

(……だいいち、おれがすっごく迷惑じゃないか)

私はそのあたりの説明を、なぜかまるで説得でもするかのように丸く遠回しにしたのだった。

しかしそれで返ってきた応えは、

「そうですか、じゃあお任せしますわ。うち、放任主義なんです。娘がそうしたいと言っているのなら、最終的な決定は淳子自身にさせるようにしていますの。当人同士の話し合いで解決していただけますか。娘もそれができない年齢ではありませんので」

というものだった。

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