ネコと教師
それで余計にささくれ立った俺は、
「なに言ってんだよ。火のないとこに煙は立たんってゆうじゃん。なんもなきゃここまで噂が出てくるかって。だいたいな木村。噂の信憑性うんぬんっつーなら、おまえワイドショーなんてどうなる?あんなもん湿ったところにドライヤーあてて乾かしてでも、無理矢理火ぃ付けてるようなもんだぞ。噂なんて嘘でもほんとでもいいんだよ。おもしろけりゃあな」
なんて言ってしまった。
なんという泥沼。
バーカバーカ。俺のバーカ。
それを聞いて木村はちょっと困ったような顔をし、俺の顔をじっと見て、
「フブクロ、俺が思うに、お前が一番最低だ」
と、もっともなことを言った。
それに俺は無理にけけけと笑い、
「じゃあ俺だって最低けっこう。なんならフブクロから汚《オ》ブクロに改名してもらってもけっこう」
などと皮肉を返した。
こういったタイプのジョークは、木村が嫌いだとわかっていながら、それでも止められなかった。
しまった、と思ったときにはすでにもう、勝手に口から飛び出してしまっていた。
それで機嫌を悪くしたのか、木村は自分の席へと戻ってしまった。
「……なんだよ、カタブツ」
なにか言わないといられず、俺はそんなことを言った。