ネコと教師

朝のホームルームの後。

とりあえずその容疑者Aに声をかける。

「昼休みに職員室に来なさい」

あくまでも事務的に。

腹のうちの苛立ちなんぞみじんも感じさせない、さわやか先生気取りで。

(……まぁ、気取ったところで格好が付いてくれるのかどうかは別なのだが)

すると目の前の容疑者Aは、私の心を見透かすかのように、ふふんと不敵に笑ってみせた。

「なに先生~。あたしのこと、恋しくなっちゃった?」

(うっせー。黙れこのピエロめ!)

……などとはもちろん言わず、

「なに言ってんだ。お前のことでな、ちょっと良くない噂が流れてるんだ。その件について訊きたいんだよ」

「へえー、ふーん。わかった。昼休みね」

容疑者A……白石淳子はそう言って、教室を出て行った。

(おい、これから授業じゃないのかよ)

……まったく。

毎度毎度、いったいなんのつもりなのか。

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