ネコと教師
「だから、今後白石の悪い噂とか聞いたら、一番最初に教えてほしい」
「いつも言ってるぞ」
「いや、そうじゃなくって。要は、俺にだけ話して、広めるのはやめてやってくれないってんの」
多田は俺の必死の訴えを聞いて、なんか、けけけといつもの調子で笑った。
「なにそれ?いままでそんなん一度も言わなかったじゃん。急にどうしたよ」
「うん。ちょっと目覚めた」
多田は本格的に笑い始めた。
「目覚めたって。よりにもよって、あの白石かよ?布袋って面食いだな。ツラだけってのもどうかと思うけどよ」
「ああ、そうかも。別にこれは広めてくれていいよ。そんで、もうひとつ頼みがある」
「けどよ、大倉とヤっちゃってんだろ、白石って!」
「そ、それはいいから。……聞けよ」
「あいあい。なんすか」
多田はもはや爆笑していた。
俺はぐっと拳を握りしめ、もうからからに渇いた喉をどうにか動かして、その最後の告白をした。
「だから、さ。白石の噂してるバカがいたら、それも最初に、俺に教えてほしいんだよ。そういうの、ムカつくし、放っとけねえ」
そうして、すべて言い終えた俺は、さらに盛大に笑われたのだった。