ネコと教師
このように白石を呼び出すのは今回で七回目になる。
一度目の万引き疑惑に始まり、毎回どっから出てくるんだと言いたくなるような、ベタでつまらないゴシップ疑惑。
呼び出して訊いてみたらば、いつも答えは、
「ああ、それ自分で広めた」
じゃあ本当なのかと訊いてみれば、最終的には、
「まあ、嘘だよね。噂なんて嘘だから流すもんじゃん」
などとのたまう。
そしていつもその後にはこう言うのだ。
「先生はどう思った?あたしが、そういうことしてると思った?」
私はそいつに決まって、
「馬鹿なことを言うものじゃない」
と言って聞かせた。
それでも、この台詞を初めて言われたとき、おれは言葉につまってしまったものだった。
だって、そんなものわからなかった。
ただの噂を聞いただけでも、人の印象ってのは簡単に転がっちまうものだ。
実際、本人が嘘だと言い切るまで、おれはその噂を信じてしまっていたから。
だが、やはりそれを口にするわけにはいかず、その後と同じように私は、
「馬鹿なことを言うものじゃない」
と、そう言ったのだ。
それを聞いた白石は、それはそれは不敵な笑みで、
「そりゃ馬鹿ですからね」
と、これまた見透かしたように言ったのだった。