ネコと教師
「え。おい、白石?」
「ん?」
「おまえ、その歩き方、どうした?」
「なにがよ?」
「いや、なんか………。いいや、どっか座れ」
「なにィ?」
なんだか先生が優しいぞ。
あんまり追い出さない。
真夜中効果か?
あたしは心おきなく先生の残り香ただようベッドに腰掛け……
「なあ、白石。ここ来る前、おまえ、なにしてた」
……ることができない。
「え。なんで?」
「どうした。なんで座らないんだ?」
「え?それは、先生が、急に呼び止めるから」
「また出たな、オオカミ少女。ひょっとして、足、痛めるかなんかしてるだろ。動くと痛いんじゃないか?どうしたんだよ、それ」
「やあ、じつはここ来る途中、のら犬に噛まれてしまいまして」
「犬……?じゃあその傷、どこにあるってんだ。診せてみろ」
「やだよ。先生のえっち」
「……そうか。なら、もういいよ」
「え?」
なんだかトーン低く引き下がる先生。
あれ。あれあれ?
またあたし……、なんか外しちゃった?
「泊まるんだろ?これ、ここ置くぞ。おれは車で寝るから。あ、そうそう。朝んなったら目覚まし鳴るようになってるから、そしたら起こしてくれ」
ごとんとちゃぶ台にあたしのおみやげ置いて、てくてくと出口へ行ってしまう先生。
「ちょっと、先生?どうしたの?」
先生は出口の扉に手をかけて、
「白石。教師に、なに期待してるんだよ」
そう言い残してから、外に出て行ってしまった。