ネコと教師
4 キンモクセイ
10・6
まったく。今日という今日はわけがわからん。
こんな夜中にうちに押しかけてきて。
しかもあいつ、制服のままだったじゃないか。
家に帰ってないのか。
おまけになんか怪我までしてるみたいだったし。
訊いたってはぐらかすばっかりで、ちっとも話しにならんしよ。
なんだってんだよ、もう。
あんなんで来られて追い出せるか?
(無理じゃねえか。くそ)
車のリクライニングを倒し、横になって私がそんなことを考えていると、窓ガラスをいつかのようにこんこんと叩くやつがいた。
白石だ。
私は今時パワーウインドウですらないこの中古車の窓を半分ほど開け、
「どうした?」
と体を起こして訊いた。
「ねえ、先生。さっきの、あれどういう意味?」
「あれって?」
「なに教師に期待してるってやつ」
「なんだ、そんなの訊きに来たのか?」
「意味わかんなかったし」
「だから、そのまんまだよ。うーん、えっと。……この話、始めるとちょっと長いんだよ。明日でいいか?」
「いま聞かせてほしい」
「あのなあ。明日も学校なんだぞ。あんまり遅くなると、起きられなくなるぞ」
「いいよ。サボる」
「アホか!んなこと言われちゃますます話せるか。いいから寝ろ。こんな話、いつだってできる」
「やだっ。それ聞かなくっちゃ寝れないよ!」