ネコと教師
……びっくりした。
白石がこんなふうに食い下がってくるなんて。
いや、しつこいのはいつもそうだが、こんなどうでもいい他人の話を聞きたいなんてことで、ここまで激しく感情をあらわにしたことに、おれは驚いた。
いつも飄々として、不透明な振る舞いばかりしているってのに。
それで気がつく。
(……こいつ、なんて顔してんだ)
夜の闇にまみれて、いままでわからなかったが、白石は眉間に皺を寄せて、見たこともないくらい真面目な表情をしていた。
いや、前に一度だけ、こいつはこんな顔をしたことがあった。
あれはおれが、こいつんちに電話をかけて、母親を説得しようとしたときのことだ。
そのときもこんなふうに、口でへの字をつくった、やけに真剣な顔立ちで、おれから受話器を奪ったのだった。
だがなんだ?
こんなの、おれのつまらない思い出話だ。
なんでここまでこいつが必死に聞きたがる。