ネコと教師
「なんだよ、まったく。……しょうがないな。おい、そこ寒いだろ。助手席座れ」
おれがそう言うと、白石は相変わらずの変な足取りで、柄にもなくおずおずと、車に乗った。
それを見届け、おれはリクライニングを起こして、背を預ける。
「おれが昔、憧れた先生がいたんだ。ちょうど、おまえくらいの年のころにな。岩崎っていって、新任の先生だった。背がひょろっと高くて、ガリガリに痩せててな。ああ、いわゆる“モヤシ”って感じの印象だった」
そうしておれは、岩崎のことを白石に話した。
モヤシみたいな体のくせに体育担当で、よく生徒からからかわれていたこと。
そのうえに見た目通り鈍くさくって、これまた生徒にバカにされていたこと。
実際にあったエピソードなんか織り交ぜつつ、彼がいかに全力でへぼい教師だったかを、言って聞かせた。
「なんでそんな先生に憧れるんだって、思ったか?」
「そうだね」
はは。はっきり言うなあ。
おい、おまえだって人のこと言えんだろうが。