ネコと教師
「なあ白石。それは人に、死ねって言ってるのか?」
「え?」
「前の者から受け継ぐことをやめちまったら、人は人でなくなっちゃうだろ。いまのおまえは、なんでことばを話せる?親がいたからだろ。親と子はどっちが大きい?だからって、親と子に優劣があると思うのか?学校だって同じだ。教師は教える立場にあるから大きい。生徒は教わる立場にあるから小さい。それだけのことだ。それがわからんか?」
「そんなの嘘。教師は偉いんでしょ。だから生徒を決めつけられる。こういうヤツだって、書いちゃえるんだ」
(……なんだよそれ……)
白石の言い方は、まるで教師は偉い存在でなくては困るかのようだった。
「よくできましたとか、がんばりましょうって、人の性格まで決められるんでしょ?先生は。だってそういうの、わざわざ書くところがあるもんね。テストでも、通知表でも、授業でも!」
そしてそれで、とうとうおれにもわかってしまった。
(……そういうことかよ。バカ)
白石が教師に絡むワケ。
異常な期待をおれにぶつけてくる理由。
その正体が、これだった。