ネコと教師

10・5(-1)


最近はよく家に帰る。

ううん。帰らざるをえない。

先生たちはあたしを相手にするには、連携が有効だと気付いてしまったようだった。

だから諦めて普通に帰ることにしている。

そのほうが、いくらかコミュニケーションが効いたから。

でも、前より怒りっぽくなってきたみたい。

冬が近く、陽の沈みが早くなってきたからかもしれない。

それでもしょうがないから、今日も家に帰る。

でも午後の授業はサボりだ。

帰り道。

いつもの繁華街を少し行ったところの横道を通り過ぎようとすると、懐かしい香りが漂ってくることに気がついた。

キンモクセイのにおいだ。

こっちの道を少し行くと、小学生のころ誰だったかとよく遊んでいた公園がある。

あたしは少しそっちへ行ってみることにした。

「変わってないなあ、ここ」

そんな自分の声に切なさをおぼえた。

(……そうだ、変わってなんかいない。変わってなんかいないんだ)

と、なにか、奥から込み上がってくる感じがした。

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