ネコと教師

公園は閑散としていた。

微妙な時間だし、子どもはまだ学校で遊んでるのだろうか。

あたしは入り口に自転車を止めて中に入り、カバンをベンチにおいて、それからその隣にあるブランコに座ってみた。

ひとりきりで昼過ぎの公園。

気分はリストラサラリーマン。

でもスカートだし、こぐのはやめておこう。

秋の風が気持ちいい。

寒くなく、暖かくなく。

それに乗って運ばれてくるキンモクセイの香りもいい感じだ。

(……なにやってるんだろう)

家に帰りたくないからって、こんなところになにを期待して来てしまったんだろう。

そうしてそのまま、あたしは少しぼうっとしていたらしい。

「……あのう、すみません。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけれども……」

背面から、なにか声が聞こえて我に返った。

振り返ってみると、公園の入り口のところに、あたしと背のさほどかわらないくらいの、小柄でメガネのおじさんが立っていて、あたしとぱっちり目があった。

これはひょっとすると本物のリストラサラリーマンの人かもしれない。

それであたしは、「ちょっと、そこアタクシの指定席なんですよ」なんて言われてしまうのかもしれない。

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