ネコと教師
「……なんだその微妙な反応。……もしかして、おまえじゃなかったのか?」
「やあ。うん、違うね、珍しく。でもいいねそれ。援助交際か。なんかすっげーベタじゃん。高校生っぽい」
そんな私の不安をよそに、当の本人は別にどうとも思っていないような口調で言った。
「おまえは中学生だ。……でも、それじゃあどこのどいつだ。こんなひどい噂立てる馬鹿は」
「する?」
「なんだよ、スルって」
「あたしと」
「は?」
「エンコー」
「アホか!ひとが心配してやってんのに。やぶからぼうになんてこと言うんだ、おまえって奴は」
なぜか私の言ったことに大げさに笑いやがる白石淳子。
「じゃ、援助なし。交際しよう」
そして、なにかとんでもないことを言いやがった。
「白石……ひとをあんまりおちょくると、いくら温厚なおれだってな……」
「あっ!言った!」
「えっ?」
「先生いま“おれ”って言ったね。いつもは似合いもしないのに“わたし”って言うくせに」
「それがどうした」
「それって、あたしに心を開いてくれた証拠だよね」
「はあ?」
「あ、用は済んだね。あたしお昼まだだから。じゃあ、先生」
そして好き勝手言うだけ言って、白石はすたたーと職員室を去っていった。