たとえばきみとキスするとか。
片思いの苦しさなら、私にも分かる。今は慰めることも、零のことを応援することもできない。
それが、なんともいえずに、もどかしい。
「私、あの雨の時ちょっとビックリしたんだよね」
「雨……?」
「ふたりで相合い傘をしてコンビニから出てきた時。莉子と零くんの距離がすごく近くなってたから」
きっと、あれは傘のせいじゃなかった。
クジを引いて、C賞で満足したのは、零と同じ景品を当てたという嬉しさがあったから。
今考えると、私はずいぶん前から零に心を揺さぶられていた気がする。
「まだ零くんのことは諦められそうにないけど、莉子と友達をやめる気はないよ。ずっと隠してて今さらだけど、まだ私と友達でいてくれる?」
柊花が泣きそうな顔で言うから、私は思わずその手をぎゅっとした。
「当たり前だよっ……!」
ぐちゃぐちゃに泣いてしまったのは私のほう。きっと零と付き合ってる時も、私に隠してる時も、柊花は苦しかったはず。
その気持ちを分かってあげられなかった。
「私は莉子に全部を話したよ。莉子は私に、話すことはない?」
柊花が涙を拭いて問う。私はグスンと鼻をすすり、「柊花、私ね……」と、話し出す。
ぜんぶを話した。
今、私の中にある気持ちをぜんぶ。
柊花は「うん、うん」と聞いてくれた。こんな優しい友達を私は一生大切にしなければ、バチが当たると思った。