たとえばきみとキスするとか。
私の首には、イルカのネックレス。
モヤモヤした状態では付けられないと、ずっと外していたけれど、今日は久しぶりにした。
シルバーのチェーンに、ラメ入りのブルーのイルカ。
私はやっぱり、このネックレスをつけると強くなれるのだ。
「莉子」
雪子おばさんがリビングへと戻ったあと、部屋に来たのは蓮だった。蓮はキレイになってしまった部屋を見渡して、寂しそうに眉をさげる。
「本当に今日、帰っちゃうんだね……」
自宅に帰ったあとでもすぐに会える距離だけど、ひとつ屋根の下の生活はやっぱり違った。
蓮と今まで以上にたくさん話すことができたし、色々な顔を見ることができた。
私にとって、この家で過ごしたことは忘れることのできないかけがえのないものになった。
突然のリフォームで戸惑う気持ちのほうが強かったけど、今ではそのハプニングがあって良かったとさえ思っている。
「今日は莉子の誕生日だね。ずっとプレゼントはなにがいいか悩んでたんだけど、思いつかなくて」
「プレゼントなんて、そんな……」
「だから一緒に選びにいかない?……まあ、俺が莉子とまたデートしたいって気持ちのほうが強いんだけど」
蓮が恥ずかしそうに言う。
「それでもし良ければ……この前の返事も聞かせてほしいなって」