たとえばきみとキスするとか。


そのあとバスに揺られること20分。イルカのアーチが可愛らしい水族館に到着した。

私はひとりぶんの入園料を払い、館内へと入る。久しぶりに来たけど、中の雰囲気は当時のままで変わってない。


熱帯魚から深海魚まで、様々な魚が水槽を泳いでいて、薄暗い館内で明かりは足元を照らすブルーライトだけ。

私は周りをキョロキョロとしながら歩き、どの学校も今日が終業式だからか学生のカップルもいた。

その手は恋人繋ぎをしていて、私もこの薄暗い中を零と手を繋いで歩いたことを思い出している。


あの時、ドキドキしたのは蓮だと思っていたからなのか。零と知っていたならば、私はドキドキなんてしなかったのか。

それはもう確かめることはできない。


だけど私は今、零と手を繋いで歩いたという事実を思い出してドキドキしている。
 
10歳だった私の気持ちは当時に戻らないと分からないことだけど、今の私の気持ちだったら、こんなにもハッキリしている。

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