たとえばきみとキスするとか。
「私ね、零とは根本的に合わないって思ってた。性格も考えてることもなにもかも違って反発ばっかり。零は意地悪なことをしてくるし、すぐにチビとかブタとか言うし、もうなんなの……!って、いつもイライラしてた」
「………」
「でも、合わないって思ってたのになんだか零と私は似ているところがあって。不器用なところとか肝心なことを言わないところとか、気持ちはせっかちなのになかなか前に進まないところとか」
いつの間にかクラゲの水槽の前には私たちふたりだけ。
ただでさえ声が響く空間で、私はちゃんと零に届くように声を張る。
「私、本当は零と柊花が付き合ってたって知って、死ぬほど焼きもち妬いてた」
幼なじみだからって、なんでも知っている気になってた。
だから秘密ごとがあって、私の知らなかった零がいて。柊花は友達だからと問いただしていた時も、私は嫉妬の塊だったと思う。
「それなら俺はとっくに死んでるよ。お前はいつも俺の前でアイツの名前ばっかり言うし、ウジウジして片想いをこじらせてるし」
たしかに私は蓮のことばかりだった。
零の気持ちなんて考えたことはなかった。