たとえばきみとキスするとか。


「だからネックレスは俺があげたものだけど、あの日莉子が恋に落ちたのは俺じゃなくて蓮だよ」

ふたりが入れ替わらなければどうなっていたかなんて今は考えても仕方ない。だって私の気持ちは……。



「私は零のことが――」

言葉を言いかけた瞬間に、グイッと手を引っ張られて気づくと私は零の腕の中にいた。



「初恋は蓮にやる。でも二度目の恋は、俺がもらう」


零が苦しいぐらい私を抱きしめるから、また涙が出てくる。


「零……っ。好き……」


私はどうしようもなく、早川零のことが好きになってしまった。


私が想い描いてたキラキラとした恋愛じゃなくても、きみの特別になりたい。

零はゆっくりと私の身体を離した。零の瞳にもうっすらと涙が浮かんでいたけれど、それを拭く前に零の指先のほうが早く私の涙に触れる。

そして、いつものように頬を引っ張った。


「ひた、い」

「ブタまんみてーな顔」

そんな照れ隠しの仕方をする零が今はたまらなく可愛く思える。

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