たとえばきみとキスするとか。
すると零が私の首の後ろに手を回した。その瞬間に、するりとネックレスが外れる。
「今日からこっちを付けて」
零の手には新しいネックレス。
シルバーの華奢なチェーンに、スワロフスキーが散りばめられあるイルカ。それは、薄暗い空間の中でも輝いて見えて私は目を丸くする。
「これは……」
「蓮としてじゃなくて俺として初めてのプレゼント」
そう言って、再び私の首の後ろに手を回しながら、ネックレスをつけてくれた。
確認するように私はクラゲの水槽に自分を映す。そこにはダイヤモンドのように綺麗なイルカのネックレスをつけた私の姿。
そっとネックレスに手を添えながら、また瞳が潤んでくる。
「俺、たぶん莉子のことを怒らせることのほうが多いし、ケンカもすると思うけど、一番近くにいてほしい」
「……零」
「俺の隣にいて。莉子が莉子らしく笑っていられるように、俺が莉子の笑顔を守るから」
あの日、零が零として言ってくれなかった言葉。
いつも涼しい顔をしているのに零が耳まで真っ赤だったから、私は嬉しくて抱きついた。
「うん。傍にいる」
強く背中に手を回すと零も応えるようにぎゅっとしてくれた。
「莉子、好きだ。16歳の誕生日おめでとう」
こんなに幸せな誕生日をもらった今日の日のことを、私はこの先も絶対に忘れない。