たとえばきみとキスするとか。
私たちはそのあと、手を繋いで水族館を出た。
薄暗かった館内とは違い、外はいつの間にか夕方になっていて、お互いの顔がさっきよりよく見える。
チラッと横目で零のことを見て、あんなに顔を赤くしていたくせにもう普段どおりの零だから、ちょっとズルい。
「わ、私たちってさ、どういう関係?」
一応、確認したかっただけなのに零は深いため息をつく。
「聞かなくてもわかるだろ」
「え、全然わかんない。私たちってもう付き合ってるの?」
「まあ、うん」
なんだかとても肝心な部分を飛び越えてお互いの気持ちを確認してしまった気がするけど、零とはもうただの幼なじみには戻れないし、こうして手を繋いでいることにもまだ慣れない。
「俺が彼氏じゃイヤなわけ?」
私が黙っていたからなのか、零はまた煽るような言い方をする。
「イヤなんて誰も言ってないでしょ?」
「今、そういう顔してた」
「は?してないし」
手は繋いだままだけど、なんだか余韻に浸るというよりは痴話喧嘩をする私たちに戻ってしまった気分。