たとえばきみとキスするとか。
待って。これじゃあ、まるで私がしたいみたいに聞こえない?
そうじゃなくて私は幼なじみの零とじゃできなかったことをすれば、実感も湧くかなって思っただけで……。
「ご、ごめん。今のは口が滑ったというか――」
「もうおせーよ」
零から降ってくる甘いキス。
ドクン、ドクンと心臓が今まで聞いたことのない音がする。この鼓動がもう零が、幼なじみじゃなくて彼氏だってことを教えてくれた。
「実感したか」
私は夕日よりも顔が熱いっていうのに、零はなんだかとても意地悪な顔。
「……ムカつく」
「お前から言ってきたことだろ」
そうだけど、ドキドキしすぎてムカつく。
そんな私を見て零はクスリと笑ったあと、私の頬に手を添えた。とても大きくて、安心する手。
「もう一回、する?」
「……うん、する」
きっと私は変わらずに零に振り回される。
それでも、零がくれたこの恋という名の煌めきは、これからも永遠に続いていく――。
【たとえばきみとキスするとか。END】