たとえばきみとキスするとか。
「支度は終わった?なにか手伝おうか?」
まだ制服のままな私とは違い、蓮はすでに私服だった。
コンビニに行くようなラフな格好なのに、なにを着ても蓮は似合うというか、立っているだけで輝きが違う。
「し、支度はとりあえず終わったよ」
忘れ物がありそうな気もするけど、その時はまた取りに帰ったらいいことだし。
「そっか。じゃあ、早く家に行こう。今日は莉子の歓迎パーティーだって母さんが張り切ってるから」
「え、そうなの?」
不安な気持ちしかなかったけど、そうやって私を待っていてくれることが素直に嬉しかった。
蓮は私のボストンバッグを持ってくれて、私たちは夕焼けの道を肩を並べて歩く。
なんだか、蓮の家に一緒に向かってるなんて変な感じだ。さらさらとお互いの髪の毛が風に揺れて、コンクリートに映ってる影がくすぐったい。
「ご、ごめんね。急にこんなことになっちゃって」
沈黙にならないように、私から話をふる。
「全然いいよ。むしろ莉子がいたら家が明るくなりそうだし、けっこう楽しみだよ」
恋愛感情なんて知らなかった小さい頃は、遊びの延長でそのまま泊まり、同じ部屋で寝ることもあった私たち。
成長とともに、泊まりやお互いの部屋を行き来することはなくなり、幼なじみという関係性は変わらないけど、私の気持ちは大きく変わってしまった。
私がこの気持ちを伝えたら、蓮はどんな顔をするだろう。
困らせてしまう?それとも私を傷つけないように笑ってくれる?どっちにしても、私が蓮のことを好きだと言ったら、この関係性は終わってしまう。
それが怖いから、私は心で蓮を想うだけ。