たとえばきみとキスするとか。
「洗い物なんてやっていい子ちゃんアピール?そんなに印象よくしたいんだ」
「そういうわけじゃ……」
すると、蓮がわざとまた部屋着の下のネックレスを指にひっかける。するりとチェーンがあらわになり、ブルーのイルカが左右に揺れている。
「や、やめて」
泡のついた手では抵抗できずに、私は言葉で怒るしかない。
「お前さ、この1か月であわよくばアイツとどうにかなれたら、なんて思ってるかもしれないけど……」
零が耳元で囁く。
「そう思いどおりにはさせねーからな。チビブタ」
「……なっ……」
零は不適な笑みを浮かべながら、なにごともなかったかのようにソファーへと向かい、蓮が見ていたサッカー番組を野球番組へと変える。
「勝手に変えるなよ」なんて蓮が怒り、「うるせー」なんて兄弟らしいやり取りを横目に、私は悶々とお皿洗いを続けた。
……はあ。やっぱり零なんて、大嫌い。