たとえばきみとキスするとか。


「ちゃんと眠れたみたいで良かったよ」

蓮はすでに制服姿だった。

枕元に置いてあるスマホは時計を刻むだけで、なんの反応もしてない。どうやら昨日の夜にアラームを設定し忘れてしまったようだ。


「ごめん、私……」

初日から朝寝坊+蓮に起こしてもらうなんて、もう私のバカ、バカ、バカッ……!


「早く顔洗っておいで。遅刻しちゃうよ」

「う、うん」

急いで洗面所へと行き、鏡に映った自分の姿を見て再び落胆。髪はボサボサだし、美容液をつけてもらったからか艶はいいけれど、全体的にテカっている。

こんな寝起きの顔を蓮に見られてしまうなんて……。


深いため息をついて、とりあえず顔を洗おうとレバーハンドルに手を伸ばすと……。

「邪魔だ」と、背後から軽く足を蹴られて、そんなことをする人物はこの家にひとりしかいない。


「人ん家で寝坊するほど爆睡するなんて、けっこう神経図太いじゃん」

傷口に粗塩を塗るような言い方をしてくる零。

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