たとえばきみとキスするとか。


「ブタまんみてー」

「ブタって言うな!」

私が零の手をつねると「いてーよ」と、今度はデコピンが飛んでくる。

やり返して、またやられてを何回か繰り返してるうちに、なんだかいつもの私たちに元どおり。


「ってか、俺の自転車どうしてくれんの」

「え?」

「チャリ置き場に置きっぱなんだけど」

そういえば零は自転車だったっけ。騒ぎが大きくなる前に学校を離れなきゃって、そればっかり考えてたから。


「そもそも私たちは徒歩通学でしょ」

「歩くとかダルいじゃん」

「アンタ絶対に将来、こつそそーしょうになるよ」

「言えてねーし」


私はふんと、口を尖らせて消毒液や絆創膏を片付ける。そして使用したガーゼや絆創膏の紙くずをコンビニの袋へと入れていると……。


「莉子」

私の片付けを阻むように、零が私の手を握る。

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