たとえばきみとキスするとか。
「え、な、なに……?」
名前を呼ばれたことと、重なっている手が、いつもの零じゃ絶対にしないことだから動揺していた。
零はなにかを言おうとした。だけど、その前にドアのほうから声が。
「ふたりとも、なにしてるの?」
それは、学校から帰ってきた蓮だった。私はビックリして思わず零の手をはらってしまった。
「ふたりの声が零の部屋から聞こえたからさ」
どうやらドアは半開きになっていたみたいで、蓮が帰ってきたことにすら気づかなかった。
「っていうか零はその顔の傷、どうしたの?」
「えっと、こ、転んだんだよね、零!」と、同意を求めるように私が答えると、零は静かにベッドから腰をあげた。
蓮のことをチラッと横目で見たあと「なんでもねーよ」と、なぜかまた零の機嫌は逆戻りしていた。