たとえばきみとキスするとか。
「蓮。私たちがいないからって莉子ちゃんに変なことするんじゃないわよ」
「「え……」」
雪子おばさんの不意討ちに声がハモってしまう私たち。
意識していたわけじゃないのに、雪子おばさんたちが今日からいないことにじわじわと現実味を増してくる。
「じゃあ、明日の夜には帰ってくるから」と、胸のドキドキを置き去りにしてふたりは旅行へと出かけていってしまった。
「母さんが言ったこと気にしなくていいからね」
蓮が苦笑いを浮かべている。
「き、気にしてないよ!蓮はそんなことしないし!」
フォローしたつもりだったのに、なんだか蓮は複雑な表情をしていた。私が不思議そうに首を傾げると、蓮の優しい手が私の頭をぽんぽんと撫でる。
「じゃあ、俺は零が莉子に変なことをしないか見張らなくちゃ」
「え、零?はは、零は変なことっていうか、いつもみたいに意地悪はしてきそうだけど」
零はもちろんまだ部屋で寝ている。見送りぐらいしなよと起こそうとしたけど、寝起きの零はいつもの倍以上に機嫌が悪いことは知ってるから。