計画的恋愛
「これ覚えてる?」

そう言われて見せられたのは高そうな額縁に入れられた一枚の絵。

そこには、肌色と茶色が乱雑に塗られていた。

何、これ……?

私は全く覚えが無くて、首を横に振る。


「ひよが3歳と3ヶ月と2日の時に描いてくれた俺の似顔絵だよ」

嬉しそうに笑顔で話す暁君。

覚えているはずはない。


「これはひよが3歳と3ヶ月と28日の時、俺のために摘んできてくれた花だよ。押し花にして残したんだ」

こちらは綺麗にかつ丁寧にラミネート加工されている。


「あとこれは中学三年の時にひよが京都へ行った時のお土産の金閣寺の御守り。これはひよが中学生になってからくれたバレンタインのチョコだよ。あ、中身はちゃんと食べたから安心してね。あとこれは……」

そう言って次々に見せられる私が暁君にあげた物。


「全部、俺の宝物だよ」

清々しい程の笑顔で自慢するように語る暁君。

私は暁君とは正反対の顔になっているに違いない。

だって私の全身は恐怖を感じすぎて冷たくなっているから。

暁君……私と暁君とのこの温度差に気付いてくれないかな……?

< 163 / 582 >

この作品をシェア

pagetop