ツインズ
「まさか、葉月と同じクラスなんてね!腐れ縁ってやつ??」
後ろの席に座るあかりが満面の笑みで言う。
「そうかも…そういえば小学校の頃も一度同じクラスになったっけ?」
「なったなった!あの時の葉月はすごい可愛かったな〜!」
あの時、と言われ内心ムッとするが、それも事実だ。
姉にもよく言われる。お前は小学校のとき可愛かったのになぜ中学に入って劣化してしまったのかと…。
(そんなの知るもんか…)
わたしは高校に入った時のために伸ばした髪の毛を少しいじる。
「でもまさか、葉月も高校デビューなんてね〜!」
あかりはニヤニヤとわたしを見る。
なんか照れるな…そう思ったわたしはあかりから顔を背けた。
「べつに…モテたいとかそんなんじゃないし、」
「あれ、あたしまだ何も言ってないんだけど?」
あかりはまたもやニヤニヤしている。
(調子狂うなぁ…)
あかりとはいつもこんな調子だった。
べつに嫌いなわけではない、むしろ大好きだ。
だけど、たまに調子を崩される、いや、たまにじゃなくていつもかも…。
(まあ、知らない人が1人もいないよりはいっかなぁ…)
「あ、なにニヤケてんの?イケメンでも見つけた??」
あかりに言われて頬杖をついていた手を離す。
「にやけてた?」
「にやけてた」
「そう…でもべつにイケメン見つけたわけじゃない」
「なんだあー、葉月の恋物語が観れると思ったんだけどなー」
「恋物語って…」
苦笑いしながらあかりになんて返そうかと考えていると担任が入ってきた。
「え゛」
きたない声を出してしまったが、入ってきた人物を見て驚く人はわたしだけではないようだ。
そう、まさしく見た目がゴリラ、ゴリラなのだ。
ゴリラ以外に例えようがない、担任の伊勢山と名乗る男は、まさしく見た目がゴリラだった。
(こんなやつが3年間も担任…)
急に静かになったあかりを横目で見ると、あまりのショックで意識が朦朧としているようだった。
イケメン大好きなあかりのことだ、おそらくイケメン先生が来るのを日々妄想していたのだろう。
わたしは内心ため息をつきながら教卓の方を向いた。