クールな部長は溺甘旦那様!?
先週、私はホテルの部屋で剣持部長とふたりで過ごした。といっても、キス以外のことは結局何もなかった。途中で寝落ちしてまった剣持部長はあまり記憶がなかったらしく、「実は前日から寝てなかったんだ」と言って何事もなかったかのようにしれっとしていた。わざわざ掘り返すこともしたくなかったし、そのままふたりで朝食をとって家に帰ってきた。

成り行きでキスしたけれど、夫婦になってから初めてのキスだった。彼の唇の感覚を思い出すと無意識に顔が歪む。

はぁ、完全に寝不足……。

「眠れたか?」なんて呑気に聞いてきたけれど、私だけが緊張して一睡もできなかったなんて恥ずかしくて言えるわけなかった。

剣持部長のことを無意識に考えながら、今は指輪をしていない左薬指をそっと撫でる。社内では結婚したことは内緒にしているため、指輪は外している。けれど、なにもない薬指に私はなんとなく物足りなさを感じてしまうのだった――。
< 198 / 362 >

この作品をシェア

pagetop