軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
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しかし、ボドワンと散歩やお茶の時間を共にできなくなっても、それを上回る幸福が日々シーラには訪れていた。
なにせ、アドルフが無事で健康な姿で毎日宮殿にいるのだ。こんなに嬉しくて心安らぐことはない。毎朝目が覚める度その事実が夢ではないことに、神様に感謝の祈りを捧げずにはいられないほどだった。
祝賀会が終わっても、戦争に伴う外交会談、政務会議、予算会議などアドルフは相変わらず多忙ではあったが、それでも彼との朝食の時間が取り戻せただけでも、シーラは心に春が訪れたような気持ちになるのだ。
それに加え、最近ではふたりの新しい習慣が生まれた。就寝前にシーラは必ずアドルフのもとへ行き、おやすみなさいの挨拶をしてキスをもらうようになった。
仕事が長引いていて彼が執務室にいるときは頬やおでこだが、寝室にいるときは唇にしてもらえる。
そんな日は胸がときめきと幸福でいっぱいになって、ベッドに潜ってもなかなか寝付くことができないほどだった。
一日が、一時間が、一秒が過ぎるたび、シーラはどんどんアドルフのことが好きになっていく。
だからこそ、彼に相応しい皇妃に早くなろうと皇妃教育の授業やレッスンにもますます気合が入った。上手くいかないことがあっても、苦手なことがあっても、シーラはもう逃げ出さない。それどころか、苦手なことこそ克服するために前向きに取り組んだ。
その成果あって、宮廷式作法はすっかり身についたし、多国語もしどろもどろながら三ヵ国ほどは会話できるようになった。乗馬やダンスはすでにお手の物だし、楽器の演奏や美術の嗜み方も随分と上達した。
そして大嫌いな美容のマッサージも、くすぐったさと気持ち悪さに連日耐え抜いたせいか、功を奏し始めていた。
「だいぶ女性らしい魅力が増してこられましたね」
湯浴みの後、いつもようにマッサージと肌の手入れを終えたシーラの身体を見ながら、美容専門の女官が言った。
一糸まとわぬ姿を鏡に映し、シーラは小首を傾げる。この美容専門の女官は時々『女性らしい魅力』がどうのこうのと口にするけれど、それが具体的になんのことを指しているのか、シーラはいまいちよく分かっていなかった。