軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
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翌朝。
朝食の席でミルクを三杯もおかわりし、さらに肉のスープを追加したシーラを見て、テーブルを挟んだ向かいの席でアドルフは怪訝な表情を浮かべる。
「……そんなに今朝は空腹だったのか?」
苦しそうな顔をしながらスープを口に運んでいるシーラの姿からはとてもそうは見えないけれど、アドルフは一応そう尋ねてみた。
「違います。けど、たくさん食べて大きくならないと良き皇妃にはなれないと教わったので、努力しようと思います」
シーラは小食だ。ただでさえ人より食べる量が少ないのに、今日は自分の皿を残さず平らげた上に、成長に良いといわれた牛乳と肉を追加して無理やりお腹に詰めている。苦しそうにお腹をさすりながらスプーンを運ぶ姿はいじらしいけれど痛々し過ぎて、とても見ていられない。
アドルフは思わずため息を吐いた。ただしそれはシーラに対してではない。この努力家で少々ズレたところのある皇妃に、きちんと説明をしなかった女官に対してだ。
そして、心配そうに見ていた給仕係に目で合図をすると、シーラの前からスープの皿を下げさせ、そのまま人払いをした。
「アドルフ様?」
せっかく頑張っているのにどうして邪魔をするのかと、シーラが非難気味に呼びかける。しかしアドルフは厳しい声色で答えた。
「無理をしても腹を壊すだけだ。その努力は称えるが、方法を違えるな」
まさか叱られるとは思っていなかったのであろうシーラは、たちまちしょんぼりしてしまう。
「でも……結婚式まであと半年もありません。それなのに私は背も胸もお尻も小さいままで、このままじゃ美しい皇妃にもなれないし、子供も上手に産めないかもしれないって……」
悲し気な言い分を聞いて眉尻を下げてしまったのは、今度はアドルフの方だった。今さら自分の体型が人並み以下の成長しかしていないことに気づいた妻を、どうやって慰めていいものか途方に暮れる。