軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
翌日。起こしにきた侍女と共にやってきた秘書官からスケジュールを告げられて、シーラは目を剥いて驚いた。
午前中にクラーラとの面会を済ませた後は、司祭ら聖職者達との昼食会、さらに閲兵式へ参加した後、執政達との晩餐会が予定されている。これではまるで国家元首のスケジュールだ。
しかも朝食を済ませいよいよクラーラと面会という直前になって、それを中止するという報告が届いた。クラーラの体調は落ち着いているが、精神が不安定なので誰にも会えないというのだ。
さすがにこれはおかしいとシーラは焦燥する。もしやマシューズはこのまま王座につかせるつもりで、クラーラが危篤だと嘘をついて連れてきたのではないかという疑念まで湧く。
面会が中止になり時間が余ったことで、今度はシーラのもとにドレス職人らがやって来た。侍女が言うには、用意していたドレスはサイズが合わないので急遽新しいものを作らせるとのことだ。
長く滞在するつもりではないから必要ないと訴えても、侍女は困った顔で「ご命令ですから」と繰り返すだけだ。侍女にドレスづくりをやめさせる権限はないらしい。
おそらくマシューズの命令だろうと考え、彼に断わりにいこうかと考えていたときだった。
「シーラ様、よろしいでしょうか」
ノックと共に部屋にやって来たのは、港で別々になったきりのボドワンだった。
シーラはホッと安堵の息を吐くと侍女に頼み込んで三十分だけ時間をもらい、人払いをする。
侍女とドレス職人らが皆出ていき、部屋が静かになってようやくシーラは気持ちを落ち着かせた。
「ボドワン、どういうことなの? お母様には会わせてもらえないし、それなのに挨拶や会談のスケジュールばかり入れられて、こんなのおかしいわ。まさか、私を王座につかせるために騙したの?」
まさかボドワンが欺くとは考えたくないが、今の状況では疑ってしまうのも仕方ない。
シーラが問い詰めるとボドワンは両手を前に向け「とんでもない!」と首を横に振った。