軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
「僕だって、シーラ様がまだクラーラ様に接見されていないと聞いて驚いてここまできたんです」

彼の慌てぶりを見るに、嘘はついていないように思える。

けれど、今のシーラにはもう何を信じればいいのか分からない。マシューズが言ったことのいったいどこからどこまでが真実なのか。

シーラは悩ましい頭を抱えると、部屋に備えつけられている木彫り細工で彩られたローズウッドのソファーに項垂れて座った。

ボドワンも沈痛な面持ちを浮かべ、静かに向かいの椅子に座る。

「こんなことになってしまって……お詫びの言葉もございません。けど、どうか信じてください。僕はあなたをクラーラ様に会わせたかっただけなのです。あなたを無理やりフェイリンの王座につかせるつもりなどありません」

考えてみればボドワンはポワニャール国の廷臣なのだ。ポワニャール国はフェイリン王国に対してもワールベーク帝国に対しても中立の立場を守っている。

彼自身はクラーラに縁があるとはいえ、フェイリン王国に協力をして得をすることはない。それどころか両国間の問題を部外者であるボドワンが掻き乱したら、ポワニャール国まで巻き込んでしまう事態になりかねないのだ。

だったら彼の目的はなんなのか。何故部外者である彼がここまでついてきてくれたのか。シーラは改めて疑問に思った。

「ねえ、ボドワン。あなたは誰の味方なの?」

もしやマシューズと何か取引をして彼に協力しているのではないかと思い尋ねたシーラに、彼は驚くほど即答した。

「シーラ様です。当然じゃないですか」

あまりにもキッパリと返され、シーラは口を噤んで目を丸くしてしまう。

その様子を見てボドワンは、どういう訳かみるみる頬を赤く染めていった。
 
< 124 / 166 >

この作品をシェア

pagetop