軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
すると、そこへノーランドが口を挟んだ。まるでふたりの言い争いを諫めるような穏やかな口調で。
「まあまあ。アドルフ陛下がいかに誠実なお方か、我々は分かっておりますとも。いかがでしょう、ここはひとつその真摯なお心でシーラ様に今すべてをお話しされては」
アドルフの眉がピクリと上がり、視線がシーラに移される。
この政略結婚の理由はもうマシューズから聞いた。これ以上さらに打ち明けることがあるのだろうかと、シーラは不思議そうな顔でアドルフを見返す。
キョトンとしているシーラの顔を見つめ、それからアドルフはさらに表情を険しくさせるとノーランドへと向き直った。
「どうされました? アドルフ陛下は我々と違って潔白なのでございましょう? どうぞお話しください、大戦と政略結婚にまつわるすべてを」
可笑しそうに口角を上げて煽るノーランドを、琥珀の瞳が射殺さんばかりに睨みつける。
しかし、それほどの怒りを見せながらもアドルフは何かを言い返すことはしなかった。
(アドルフ様は何か隠していらっしゃるの……?)
シーラの胸が不安に曇る。この結婚の目的がフェイリン王国の王位だったということ以上に、彼の口を噤ませる真実とはなんなのだろうか。想像するだけでシーラの鼓動は不快に乱れ、胸がギュウっと痛くなる。