軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
思ってもいなかったアドルフの台詞と行動に、シーラは一瞬戸惑う。
すぐ怒るこの男と行動を共にしたくない。けど、さっき彼は謝ってくれたから、もう怒らないかも知れない。
ためらい、迷いながらも、シーラはアドルフの手をとって立ち上がった。
やっぱり、彼の手は大きい。何度か身体を支えられたり腕を掴まれたりしたときも思ったけれど、こうして手と手を重ねてみるとそれが如実に分かる。そう思ってしみじみと眺めてしまった。
「……大きい」
「……小さいな」
思わず零した呟きに、アドルフの呟きが重なった。
シーラがハッとして顔を上げると、アドルフもまた同じ表情をしてこちらを見つめてきた。
互いに顔を見つめたまま沈黙が流れたが、やがてシーラがクスクスと笑い出す。
「ふふっ、おんなじこと思ってたぁ」
自分とは考え方も生きてきた場所も全然違う人なのに、こんな些細なことで同じ感想を抱くのが、なんだか可笑しかった。
「ね。すごいですよね。ほら、こんなに頑張って指を開いても、私の手なんかアドルフ様の手にぜーんぶ隠れちゃう」
掴んでいた手をいったん離すと、シーラはアドルフの手の平を自分の方に向けさせて、ペタリとそこに自分の手を重ねた。
指の長さも、手の平の大きさも、肌の温かさも質感も、何もかもぜんぜん違う。