軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
何か間違っていただろうかと思い、シーラは慌てる。
「ごめんなさい、まだ子供の作り方は習っていないのです。教えていただけますか? それともレッスンしないと難しくてできないことなのでしょうか?」
ところがアドルフはそれを聞いて両手で顔を覆うと、部屋の隅っこに行ってしまった。ひどく落胆している様子だ。
「あの、アドルフ様……?」
なぜだろう、さっきまでの熱く甘いムードはどこかにいってしまい、妙な空気が流れる。
(アドルフ様、落ち込まれてる? でも、お耳が真っ赤。……照れているのかしら?)
声を掛けにいこうかと、シーラがベッドから降りようとしたときだった。
「……ことを急くなと、神の思し召しだな。これは」
顔から手を離したアドルフが、フーッと大きく息を吐き出して独りごちた。
どうやら冷静さを取り戻したようだ。
そしてベッドから降りかけていたシーラを戻すと、再び椅子に腰を下ろして、気を取り直すように自分の前髪を掻き上げた。
「さっきのことは気にするな。気を逸らせた俺が悪かった。そもそも怪我人相手に、もうひとつ傷を増やすところだった」
「はあ……」
意味の分からぬまま返事をして、シーラは小首を傾げる。
「子作りには準備が必要なのですね。ごめんなさい、私何も知らなくて。メア宮殿に帰ったら、たくさんお勉強しますね」
ワールベークとフェイリン両国の絆のために、ふたりの血を引く子供がどれほど重要か、シーラはもう理解している。だからこそ、帰ったら猛勉強せねばと思った。
頭を使うのか身体を使うのかよく分からないが、精いっぱい努力してたくさんの子供を生もうと決意する。
こぶしを握り込んで強い意志を見せるシーラに、アドルフは少し困ったように眉根を寄せると。
「あー……、学ぶのは最低限でいい。後は俺が実践で教えてやる」
手で口もとを押さえもどかしそうに、けれどどこか嬉しそうに告げた。