軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
四ヵ月後――。
アドルフとシーラの結婚式、およびシーラの戴冠式は予定通りに行われた。
この日のために一年間きっちりと皇妃教育を受けたシーラは、誰から見ても帝国皇妃に相応しい品格と華やぎを備えていた。
真っ白い絹サテンの上に金糸刺繍の入った絹チュールを重ねたドレスは、腰から長く伸びるトレーンも真っ白く、裾に金のフリンジがついている。
その上にアーミンで裏打ちされた深紅のベルベットマントを肩から羽織り、頭には法王より授けられた王冠を戴いて、シーラは大陸教皇圏にある大寺院で、アドルフの妻になることを宣誓した。そして同時に、フェイリン王国の象徴国王となることも受理される。
その堂々たる姿は気高く美しく、小柄な体形や幼い造形の顔立ちにも関わらず、集まった人々に威厳すら感じさせた
しかし、宗教式典が終わり華やいだパレードになると、シーラは一転して清純で可憐な印象を与えた。
街道を走るリボンで飾られた白と金のオープン馬車に乗り、純白とピンク色のチュールレースを幾重にも重ね真珠で飾った愛らしいドレスに、大きなリボンとダマスクローズの髪飾りをつけ、シーラは沿道で祝福の声をあげる人々にニコニコと微笑んで手を振る。
もちろんその隣には成婚用の白い軍服に黒と金の飾帯を賭け、胸には国家勲章を飾ったアドルフが同乗している。いつもは雄々しく厳めしい印象の皇帝も、今日ばかりは上機嫌そうな顔を民に見せていた。
そうして、新しい皇妃を迎える喜びと、ワールベーク帝国とフェイリン王国の新たな絆を祝福する声に包まれて、幸福な一日は幕を閉じた。