軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
アドルフは信じられない。何かの間違いではないかと思う。
しかし、三回目の同じ質問にもヨハンは「陛下、間違いありません。このお方がシーラ様です」と間違いを認めなかった。
「……分かった、彼女がシーラ王女であることは認めよう。……けれど、年齢の情報は間違っているはずだ。十八歳ではなく十三歳の間違いだろう」
シーラは物心つく前にここへ連れてこられ、王女教育をされていないという。だから、王女らしからぬ態度も、素朴過ぎる格好も、理解できなくはない。
しかし、年齢だけは別だ。アドルフはそこだけは譲れなかった。
背格好も肉付きも顔立ちも、とても十八歳の成長を遂げた娘には絶対に見えない。
「失礼なことを仰ってはいけませんよ、陛下。俯瞰で見るから幼く見えるんです。ほら、同じ高さに目線を合わせれば……十五歳には見えなくもありません」
ヨハンが腰を屈めたり、顔を傾けたりしながらシーラの顔を覗き込んでいるのを見て、アドルフは片手で顔を覆うと大きく溜息を吐き捨てた。
「お前、俺がこの女と子作り出来ると思うのか」
「難しいですねえ。陛下はもっと母性的な胸をした女性がお好みですから」
余計なことまで口にしたヨハンをひと睨みしてから、アドルフは初めてシーラに話しかけた。
「お前の名と年齢を聞かせろ」
圧を感じる命令口調に、シーラは一瞬身体を強張らせたが、スカートの上のクルミの殻をパッパッと手で払うと「シーラ・アッシュフィールドです。三日前に十八歳になりました」と答えた。
鈴を転がすような声はいかにも見た目通りで、アドルフは内心苦笑を零す。